――高率手数料と継続依存は、どのように設計されたのか
■ ここから先は、金融ではなく「ビジネスモデル」の話である
ここまで見てきたとおり、二社間ファクタリングは、実質的に貸付であり、しかも行政の沈黙の中で拡大した脱法市場だった。
しかし、この市場の本当の異常性は、法的構造だけにあるのではない。
問題は、そのビジネスモデルである。
なぜ、この市場では、年利換算で数百パーセントに達する取引が常態化したのか。
なぜ、多くの利用者が、短期間で抜けられなくなったのか。
それは、偶然ではない。
最初から、「高率」と「依存」を生み出すように設計されていたからである。
■ 手数料は「高くなった」のではない、「高く設定された」
二社間ファクタリングの最大の特徴は、異常な手数料水準である。
一回の取引で、額面の一割、二割。
期間は、わずか一か月前後。
年利換算すれば、容易に数百パーセントに達する。
これを、市場原理の結果だと説明する業者もいる。
リスクが高いから仕方がない。
無担保だから高くなる。
銀行が貸さない層だから高金利になる。
しかし、この説明は成り立たない。
なぜなら、この取引では、リスクの大部分は、利用企業に残されたままだからである。
回収不能リスクは、原則として利用企業が負担する。
売掛先の信用リスクは、ほとんど業者に移転していない。
回収業務も、利用企業自身が行う。
業者は、実質的に、短期間、資金を前渡しし、確実に回収し、しかも高率の対価を得る。
リスクが高いどころか、極めて安全な取引である。
高率手数料は、リスクの結果ではない。
最初から、取れるように設計された収益構造である。
■ 「手数料」という名称が生む、規制回避の効果
もう一つ、重要なのが、対価の名称である。
利息ではない。
金利でもない。
常に、「手数料」と呼ばれる。
しかし、その実態は、明らかに、資金の前渡しに対する時間価値の対価である。
にもかかわらず、「利息」という言葉を使わないことで、
利息制限法を回避できる。
出資法の上限を回避できる。
高金利という社会的非難も避けられる。
名称の言い換えだけで、金融規制の大部分が無効化される。
この仕組みは、偶然ではない。
貸金規制を熟知した者でなければ、設計できない構造である。
■ 継続取引は、例外ではなく「前提」として組み込まれている
二社間ファクタリングは、本来、一回限りの資金化手段であるはずである。
売掛債権を売って、資金繰りをつなぐ。
入金があれば、取引は終わる。
しかし、現実の市場では、ほとんどの利用者が、短期間のうちに繰り返し利用する。
しかも、その頻度は、急速に高まっていく。
これは、利用者の判断ミスではない。
継続利用を前提にした構造が、最初から組み込まれているからである。
典型的な仕組みは、こうである。
売掛金の大半は、次回の資金繰りに消える。
手数料負担で、資金余力はさらに減る。
次の売掛金が発生すると、また同じ業者に持ち込む。
この循環に入ると、抜けるのは極めて難しい。
一度使わせれば、自然に、次の取引が発生する。
二社間ファクタリングは、単発取引ではない。
継続依存型の商品として設計されている。
■ 「限度額」「枠設定」という、もう一つの依存装置
多くの業者は、利用企業ごとに、いわゆる「買取枠」や「限度額」を設定する。
一見すると、与信管理のように見える。
しかし、ここにも、明確な意図がある。
枠を設定することで、利用者は、
資金繰りに困れば、まずこの業者を思い出す。
他社を探すより、既存枠を使う。
条件交渉もしなくなる。
銀行の融資枠と同じ心理効果が生まれる。
だが、決定的に違うのは、金利規制が存在しない点である。
枠取引と高率手数料の組み合わせは、依存と収奪を同時に最大化する。
ここでも、偶然の要素はほとんどない。
典型的な消費者金融モデルを、企業向けに移植した構造である。
■ 紹介料と広告が、依存市場をさらに拡大させた
この市場が急拡大した最大の要因は、紹介と広告である。
税理士。
コンサルタント。
資金繰り代行業者。
ウェブ広告。
比較サイト。
利用者の多くは、自分で業者を探したのではない。
誰かに紹介され、あるいは広告に誘導されて、この市場に入っている。
しかも、その背後では、高額の紹介料が支払われている。
この紹介料は、どこから出るのか。
利用者が払う手数料からである。
つまり、高率手数料の一部は、最初から、
広告費と紹介料として外部に流出することが前提で組み込まれている。
高率でなければ、このモデルは成り立たない。
脱法スキームと集客スキームは、最初から一体として設計されていた。
■ ここまで完成して、初めて「市場」になる
ここまで見てきた構造を並べると、はっきりする。
実質貸付でありながら、貸金規制を回避し、利息規制を回避し、高率対価を正当化し、継続依存を生み、広告と紹介で拡大する。
これは、場当たり的に歪んだ市場ではない。
極めて完成度の高い、脱法金融ビジネスである。
しかも、このモデルは、一社だけの工夫ではない。
業界全体に、ほぼ共通して広がっていた。
ここに、この問題の最も深刻な点がある。
これは、個別業者の暴走ではない。
業界標準として確立した、脱法モデルだったのである。
■ 次に問うべきは、「誰がこのモデルを拡散させたのか」である
ここまでで、二社間ファクタリングの中核構造は、ほぼ明らかになった。
では、このモデルは、どこから生まれ、どのように業界全体に広がったのか。
偶然に、複数の業者が同じ仕組みを思いついたとは考えにくい。
誰かが、最初に設計し、誰かが、横展開し、誰かが、広告と紹介で一気に拡散させた。
次回は、視点をさらに踏み込ませる。
「脱法モデルの拡散経路――誰が業界標準を作ったのか」
二社間ファクタリングは、自然発生した市場ではない。
意図的に設計され、意図的に広められた市場だった可能性が、極めて高い。

