なぜ、2社間ファクタリングのスキームの違法性を正面から争う弁護士がいないのか?

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

1 “グレー”と呼ばれ続ける理由

2社間ファクタリングは売掛債権の「売買」契約であり、法律上は債権譲渡として認められています。手数料が高くても、譲渡人が売掛先倒産のリスクを負い、買戻し義務を負わない限りは貸付と異なる──この構造が大前提です。金融庁も「経済的に貸付と同様なら貸金業に該当し得る」と注意喚起するにとどめ、制度全体を違法とは断じていません。金融庁


2 確定判例が乏しいから訴訟材料が足りない

裁判所が2社間ファクタリング自体を違法とした判例は現在まで存在しません。「実質が貸付か」を争った訴訟は散発的にあるものの、業者が買戻し特約を外すなどして和解に持ち込むため、正面からの司法判断が蓄積しません。判例データベースを調べても、違法認定に至ったのは給与ファクタリングや買戻しを強制したケースが中心です。PMG株式会社


3 依頼者にとって“費用対効果”が合わない

仮に訴訟で勝っても、回収できるのは「超過手数料」と弁護士費用程度です。売掛先の支払期日は迫り、資金繰りは待ったなし。「裁判しているうちに倒産するくらいなら、和解して資金を回したい」というのが多くの中小企業の本音です。弁護士側も、着手金を抑え成功報酬で受任するにはリスクが高く、経済合理性が成り立ちにくいのが実情です。


4 立証負担と情報非対称の厚い壁

違法性を主張するには、

  • 業者が実質的に元本・利息・返済期日を設定していた
  • 資金負担とリスクが譲渡人側に集中していた
  • 債権譲渡登記や通知が形骸化していた
    といった事実を契約書・メール・入出金履歴で示す必要があります。しかし取引当事者が少人数で、やり取りが電話中心の中小企業では証拠がそろいにくく、訴訟での立証は困難です。

5 「貸金業」認定のハードル

業者が貸金業登録をしていない場合でも、借主の返済義務が契約上存在しない限り、形式的には債権売買になります。買戻し特約を排除すれば、たとえ手数料が年率100%相当でも違法とは断定されません。ここに制度の抜け穴があり、弁護士が「絶対勝てる」と言えない要因があります。


6 行政指導と自主規制が“疑義案件”を吸収する

ファクタリング協会や大手金融グループの子会社は、手数料上限やリコース禁止を自主規制に盛り込み、訴訟リスクを下げています。違法すれすれの業者は金融庁の照会や業務改善命令で市場から退場させられるため、弁護士が法廷で争う前に実務的な解決が済んでしまうケースが多いのです。


7 弁護士業界のビジネスモデルがマッチしない

中小企業の資金繰りトラブルは、少額・短期間での解決が望まれます。ところが訴訟は時間もコストもかかり、しかも勝訴しても回収不能リスクが残ります。結果として、

  • 法テラスの資金援助の対象になりにくい
  • 企業法務を扱う大規模事務所は取扱金額が小さく受任しない
  • 債務整理を専門にする弁護士は分野外でリサーチコストが高い
    という構図ができあがり、「違法性を正面から争う弁護士がいない」と映ってしまいます。

8 今後訴訟が増える可能性はあるのか

2024年以降、手形・売掛債権早期決済のデジタル化が進み、取引履歴がクラウドで残るようになりました。証拠が集めやすくなることで、買戻し義務や暴利手数料を巡る新しい集団訴訟が起きる余地があります。また、ADR機関が開示命令や調停案を公表すれば、司法判断に近い先例が積み上がり、弁護士が訴訟を戦いやすくなるかもしれません。


9 まとめ──“いない”ではなく“まだ少ない”

2社間ファクタリングの違法性を争う弁護士が表に出にくい背景には、

  1. 判例が少なく勝算を読みづらい
  2. 依頼者・弁護士双方の費用対効果が低い
  3. 証拠不足と情報非対称で立証負担が重い
  4. 行政指導・和解で片付くため訴訟まで発展しない
    という複合的な要因があります。

しかし市場規模の拡大とデジタル証拠の蓄積が進めば、“まだ少ない”弁護士が“普通にいる”状況へ転換する可能性は十分にあります。違法スキームを根絶するには、企業側が契約書と取引記録を残し、行政やADR機関が最新事例を公開し続けることが不可欠です。訴訟は最後の手段であっても、「勝てる材料」を蓄える準備こそが、弁護士を法廷に引き出す最短の近道となるでしょう。