「最初は、1回だけと思っていたんです」
2社間ファクタリングを利用した中小事業者の多くが、口をそろえてそう語ります。たしかに、ファクタリングは借入ではありません。金融機関のように審査で落とされることも少なく、資金繰りに困ったときの“最後の砦”として、多くの事業者が頼りにしています。
しかし、その「1回だけのつもり」が、気づけば3回、5回、毎月のように続いている。手数料は高く、資金繰りは苦しくなるばかり。それでも「次の支払いを乗り切るために」また使ってしまう──。
なぜ2社間ファクタリングは「抜けられない沼」と言われるのでしょうか。
利用のしやすさが“始まりの罠”になる
2社間ファクタリングは、債権の売掛先に通知が行かないため、取引先に知られずに資金調達が可能です。一般的な3社間ファクタリングとは違い、売掛先の同意も不要ですから、申込から入金までが非常にスムーズ。業者によっては即日対応も可能で、WEB上で完結する契約も増えています。
資金繰りに詰まったとき、「これしかない」と思った中小事業者にとって、この手軽さは魅力です。審査も緩く、過去に信用情報に傷がある場合でも問題視されません。
この利便性が、いわば“入り口”のハードルを極端に下げてしまっているのです。
資金は減り、次の原資も減る
2社間ファクタリングの多くは、「ディスカウント方式」で行われます。これは、将来入金される予定の売掛債権(たとえば100万円)を、あらかじめ手数料を引いた金額(たとえば85万円)で買い取るという仕組みです。
つまり、本来100万円入ってくるはずの売上が、実際には85万円しか手元に残らない。そして、満額が入ってくるはずだった将来の入金は、すでにファクタリングで“前借り”してしまっているため、実際のキャッシュフローはどんどん細くなっていきます。
しかも、次の月も同じように資金が足りない──。なぜなら、前月に手数料を払って先に回収してしまったからです。これが繰り返されることで、「毎月ファクタリングを使わないと資金が回らない」という慢性状態に陥ります。
利益が出ても現金が足りない構造
ファクタリングを使い続けていると、帳簿上は黒字であっても、実際の手元資金が足りないという状態が発生します。原因は明白です。本来のキャッシュインを前借りしているため、決算書上の「売上」や「利益」が実際の現金残高に結びついていないからです。
しかも、ファクタリング手数料は経費処理できるとはいえ、10~30%にも及ぶことがあるため、利益に対する圧迫は非常に強いものになります。例えば、500万円の売掛債権に対して20%の手数料を支払えば、実際には400万円しか受け取れません。100万円は費用という名の“目減り”です。
事業としては黒字なのに、支払うお金が足りない──。この矛盾が、ファクタリング利用者を“もうやめたいのにやめられない”心理に追い込んでいきます。
売掛先が限られている場合、抜け出す余地がない
また、中小の事業者や個人事業主にとっては、「売掛先が2~3社しかない」という状況も珍しくありません。その場合、1社の売掛債権をすでにファクタリングに使っていれば、他に担保となる債権が残っていないことになります。
これはつまり、「回収された売掛金を次のファクタリングに回さなければ資金調達ができない」ということ。自転車操業とはこのことです。
新しい売上が増えるか、別の売掛先が出現しない限り、この循環から抜け出すことはほぼ不可能です。
融資ではないため、借入の代替にもならない
ファクタリングは「借入ではない」という説明がなされます。たしかに、信用情報には登録されませんし、金融機関からの融資枠を圧迫することもありません。
しかし、逆にいえば**「信用がない状態でも資金調達ができてしまう」**ため、抜本的な資金体制の改善や、事業構造の見直しが先送りになってしまうという落とし穴もあります。
銀行から融資を受ける場合には、決算書や資金繰り表の改善、税務面の整備が求められますが、ファクタリングではそのような「構造改革」のプレッシャーがありません。だからこそ、ファクタリングを使い続けていても、事業の体力は回復しないまま、依存が深まっていくのです。
脱却を目指すには「回収を一時止める勇気」が必要
では、どうすればこのループから抜け出せるのでしょうか。答えは単純です。「一度、ファクタリングを使わない月を作る」ことです。
しかし、現実にはそれが極めて難しい。なぜなら、売掛先から入金されるタイミングと支払いのタイミングにズレがあるからです。いったんファクタリングを止めてしまえば、次の月の支払いが立ち行かなくなる事業者も多くいます。
実際に脱却に成功した事業者の多くは、次のような対策を取っています。
- 小規模でも融資を取り、つなぎ資金に充てる
- 仕入れ先に支払いサイトの延長を依頼する
- 一時的に売上を圧縮してでも固定費を減らす
- 代表者が個人資金を投入して“断ち切る”
簡単ではありませんが、「一時的に苦しくても、ファクタリングの連鎖を断ち切る」という判断ができるかどうかが分かれ目になります。
「使い始めるのは簡単、やめるのは困難」
2社間ファクタリングは、制度上は便利な資金調達手段のように見えます。しかし、実態は「売上の先食い」であり、それを繰り返すことで将来の現金収入がどんどん目減りしていく仕組みです。
「最初は1回だけ」と思っていたのに、気づけば手数料がかさみ、常に資金繰りに追われる状態になっていた──。この繰り返しが「ファクタリングの沼」と言われるゆえんです。
抜け出すには、仕組みの理解と一時的な覚悟、そして戦略的な財務改善が必要です。それをしない限り、「やめたくてもやめられない」は、これからも続いてしまうでしょう。

