2社間ファクタリングをめぐる議論は、インターネット上では頻繁に見かける。しかし不思議なことに、社会問題として大きく取り上げられることはほとんどない。金融の世界でこれほど急速に広がった仕組みであるにもかかわらず、社会全体の問題意識は驚くほど低い。
この状況にはいくつかの理由がある。
まず大きいのは、利用者が「企業」であるという点だ。
消費者金融や個人向けローンであれば、利用者は個人であり、社会的な保護の議論が起こりやすい。しかし2社間ファクタリングは基本的に法人取引である。企業同士の契約という整理になるため、問題が起きても「事業者間の契約問題」として処理されてしまう。
つまり社会はそれを「自己責任のビジネス」と見なしてしまう。
しかし現実には、その利用者の多くは大企業ではない。
資金繰りに悩む中小企業や小規模事業者である。従業員数人、あるいは家族経営に近い会社も少なくない。そうした企業にとって資金繰りは会社の存続そのものに直結する問題だ。
それにもかかわらず、社会の視線はそこに向かない。
もう一つの理由は、問題が「表に出ない」ことである。
企業の資金繰りは極めてセンシティブな情報だ。資金調達の失敗や資金繰りの悪化を公にする経営者は多くない。取引先の信用にも影響する可能性があるからだ。結果として、トラブルが起きても個別の企業の中で処理されていく。
つまり統計が表に出にくい。
被害が見えない社会問題は、議論の対象にもなりにくい。
さらに現在は、インターネット広告の影響も大きい。
検索エンジンで「資金調達」「資金繰り」と調べれば、ファクタリング関連の広告や比較サイトが大量に表示される。そこでは便利な資金調達手段として紹介されることが多い。
もちろん、売掛金を資金化する仕組み自体は古くから存在している。
しかし現在広がっている2社間ファクタリングの多くは、インターネット広告と比較サイトによって急速に拡大した市場である。
問題は、その情報の多くが広告であることだ。
比較サイトやランキングの形を取っていても、実際には紹介料や広告費によって運営されているケースが少なくない。利用者にとっては中立情報のように見えるが、実際には営業の延長であることもある。
こうして見ると、社会問題として認識されにくい構造が見えてくる。
利用者は企業である。
トラブルは表に出ない。
情報の多くは広告である。
この三つが重なることで、問題は可視化されないまま市場だけが拡大していく。
本来、金融サービスは社会インフラの一部である。
銀行、保険、証券などの分野では、制度や監督が整備されてきた。利用者保護の議論も積み重ねられている。
しかし2社間ファクタリングは、そのどこにも完全には位置づけられていない。
貸金でもなく、消費者金融でもなく、単なる債権売買として扱われることが多い。その結果、制度の議論の外側に置かれてしまう。
だからこそ社会の問題意識も生まれにくい。
しかし現実には、多くの中小企業が資金繰りの最前線でこの仕組みに接している。銀行融資が難しい状況の中で、インターネット検索を入り口に利用を検討する企業は確実に増えている。
問題は、この現実がほとんど共有されていないことだ。
社会が問題として認識しない限り、議論も制度も動かない。
そしてその間も、市場だけは拡大していく。
2社間ファクタリングをめぐる本当の問題は、制度の是非だけではない。
それを取り巻く社会の無関心そのものなのかもしれない。

