東京ファクタリング被害対策弁護団の活動とその意義―悪質なファクタリング被害への法的支援と社会的役割―

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

【1. ファクタリング被害の実態と法的論点】

ファクタリングは本来、売掛債権を譲渡することで資金化を図る正規の金融手段とされている。しかし、国内ではこの仕組みが悪用され、違法または違法性の高い取引が行われている事例が報告されている。特に「給料ファクタリング」と呼ばれる手法が問題視されており、これは労働者が未払いの給与債権を譲渡する形式を取りつつ、実質的には高利の前借金を強いる取引とみなされている。

こうした取引は貸金業法違反と判断された裁判例も複数存在しており、社会問題化している。


【2. 弁護団の設立と活動趣旨】

こうした背景の下、2020年3月に「東京ファクタリング被害対策弁護団」が発足している。弁護団は、給料ファクタリングや悪質な事業者向けファクタリングによって被害を受けた個人や法人からの相談を受け付け、必要に応じて法的対応を行っている。

弁護団の趣旨は、被害者の権利回復を図るとともに、違法な取引手法に対して法的にどのような対応が可能かを明らかにし、社会的な再発防止の仕組みづくりに貢献することであるとされている。


【3. 被害相談と法的対応の実際】

弁護団の活動の中心は、被害者からの相談受付にある。電話やインターネット経由で寄せられた相談内容は、個別の案件対応に役立てられると同時に、被害の傾向分析や業者の手口の把握にも活用されている。

2020年春に実施されたホットラインでは、短期間で100件以上の相談が寄せられており、被害の広がりがうかがえる。相談に基づき、取引の違法性が高いと判断された場合には、返済義務がないことを主張する訴訟や、すでに支払った金銭の返還請求といった法的手段が講じられている。

契約形態が「債権譲渡」とされていても、実態としては貸付に該当するという主張がなされるケースが多く、東京地裁などでも実質的に貸付と認定された判例が出ている。これに基づき、複数の被害者を集めた集団訴訟が行われている事例もある。


【4. 行政機関との連携と制度的課題】

弁護団はまた、金融庁や消費者庁などの行政機関に対しても情報提供や意見提出を行っており、制度の改善に向けた働きかけを続けている。こうした連携の成果の一つとして、金融庁が2020年以降に「ファクタリングを装ったヤミ金融」への注意喚起を強化した動きが挙げられている。

制度的な問題としては、「債権譲渡」と「融資」の境界が明確でないこと、契約書の複雑さや情報の非対称性によって、利用者が契約の本質を十分に理解できないまま契約してしまうこと、そして違法行為への行政執行が依然として限定的である点が指摘されている。


【5. 給料ファクタリング問題の現在地と事業者向けの課題】

給料ファクタリングについては、2020年を境に表面的には沈静化しているように見えるが、悪質業者の中には名称やスキームを変更して活動を続けている例もある。最近では、個人事業主や小規模法人を対象にした事業者ファクタリングにおいて、同様の構造を持つ取引が見られている。

こうしたケースでは、契約当初から違法性を感じさせないよう巧妙な説明が行われており、相談者の多くが「債権譲渡に見せかけた融資」と認識するまでに時間を要している。結果として、弁護士の介入が必要になる事案が後を絶たない。


【6. 弁護団の意義と今後の展望】

東京ファクタリング被害対策弁護団の活動は、単なる個別救済にとどまらず、ファクタリング制度における構造的な問題を明らかにし、社会に警鐘を鳴らす役割を担っている。営利目的ではなく、被害実態の把握と法的支援、さらには制度設計に向けた提言という公共的な目的に基づいて運営されている点が特徴といえる。

ファクタリングという仕組み自体を否定するものではなく、本来の健全な取引が維持されることを前提としつつ、その名の下に行われる不当な金銭取得行為について、法的・社会的に抑制を加える必要があるという立場である。

被害の性質上、声を上げにくい傾向があるが、こうした弁護団の存在が、被害者にとっての実務的な救済手段であると同時に、制度改革の契機となることが期待されている。