政府の公式見解として示された石田晋也・尾崎有両政府参考人の答弁は、一見すると中立的な姿勢を装いながらも、実態としては問題の本質に踏み込まず、現場の混乱を黙認しているに等しい。特に中小零細事業者を取り巻く資金繰り環境において、二者間ファクタリングが果たしている負の役割を直視しようとしないその姿勢には、強い疑問が残る。
石田参考人は、ファクタリングが「融資ではなく債権売買である」との一般論を繰り返す一方で、その実態に潜む高額手数料や回収リスクの移転不全については、ほぼ言及していない。現場では、名ばかりの「債権譲渡契約」によって、経済的実質が貸付に近い取引が横行しており、年率換算で数百パーセントに及ぶ手数料が発生する例も珍しくない。こうした実態を放置しておきながら、あたかも資金調達手段の選択肢の一つとして容認するかのような発言は、極めて無責任と言わざるを得ない。
尾崎参考人の「偽装ファクタリング」に対する説明もまた、表面的な定義に終始し、実態の違法性や行政の対応不足に踏み込むものではなかった。偽装ファクタリングとは、本来の売買とは異なり、売掛債権の譲渡を装った高利貸付である。債権譲渡後も債権者(事業者)が回収業務を担い、回収不能時には買戻しを求められるといった構造は、明らかに債権回収リスクを買主が負担していない証左である。つまり、売買の形式をとっているに過ぎず、実質的には違法な貸金行為である。
にもかかわらず、両参考人の答弁は、こうしたグレーな取引が市場で黙認されている背景にある立法や行政の無作為を正当化するような内容であった。これは、平木大作議員が2019年3月25日の参議院予算委員会で提起した「事業者登録制度の必要性」や「反社会的勢力の関与の懸念」といった重大な論点に対する、事実上の黙殺でもある。
現在、二者間ファクタリングは貸金業規制の網をかいくぐる形で運用されている。金融庁も「貸金でない限りは管轄外」との立場を貫き、国民生活センターや弁護士会が警鐘を鳴らしても、政府としての実効的な対応はほとんど見られない。しかも、こうしたグレーゾーンを利用したファクタリング業者の中には、強引な回収や違法金利設定を行う例が多数報告されている。被害を受けているのは、資金繰りに窮した零細事業者であり、本来であれば救済の対象となるべき立場の人々だ。
そもそも、売掛債権の譲渡を理由に、100万円の債権に対し30万円程度の入金しかされないような「割引」は、もはや商取引とは呼べない。こうした事例では、実質的な利率が年率300%を超えることもあり、これは出資法の上限(年109.5%)をはるかに超える。にもかかわらず、契約形態が「債権譲渡」であることを理由に、貸金業としての規制を免れているという現状は、法の趣旨を歪める脱法行為である。
さらに悪質な業者の場合、回収不能を口実に債権の売主に「損害賠償」や「違約金」を請求するなどして、間接的に返済義務を課している。これでは形式上の売買とは言えず、返済義務の残る貸付そのものであり、貸金業法の適用対象となるべきである。こうした取引の存在を政府が知りながら、なおも「経営判断に委ねる」との姿勢を取り続けることは、無責任の極みである。
平木議員の指摘にあるように、今こそ法制度の整備が求められている。例えば、ファクタリング業者に対する登録制の導入や、手数料に対する上限設定、形式と実態の乖離をチェックする監査制度の確立などが急務である。現行の制度のままでは、悪質業者が合法的な顔をして中小企業を食い物にすることが可能な状況が続く。こうした構造を放置すれば、資金繰りに苦しむ事業者の自殺や倒産が今後も続出する可能性がある。
政府は、形式論に逃げ込むのではなく、実態を直視しなければならない。行政に求められているのは、中立的な解説ではなく、困っている事業者を守るための実効的な介入である。その第一歩として、少なくとも偽装ファクタリングに該当する可能性の高い取引を、貸金業として取り締まる方針を明確に打ち出すべきであろう。
繰り返すが、資金繰りに困窮する中小零細事業者は、違法な搾取の対象ではなく、保護すべき社会的弱者である。政府がその立場を理解せず、静観し続ける限り、ファクタリング業界の健全化など望むべくもない。いまこそ、立法府と行政が連携し、ファクタリングという制度そのものに透明性と公正性を取り戻す改革を進めるべき時である。

