「買戻し特約がなければファクタリング」では済まされない

ファクタリングの違法性と契約について

– 実質ヤミ金を生む抜け穴と、貸金業界に求められる責任 –


ファクタリングという金融スキームは本来、売掛債権の譲渡に基づく資金調達方法として、資金繰りに悩む中小企業にとって貴重な手段となり得るものです。しかし近年、この制度を悪用した「2社間ファクタリング」による違法な貸付行為、いわば「偽装ファクタリング」が横行しており、日本貸金業協会も平成29年12月に「ファクタリングを装ったヤミ金融に注意」との声明を公表しています。

同協会は買戻し特約がある場合や、高金利・担保徴収の実態を挙げ、それらが「貸金業法違反の可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。しかし、今日の実務においては買戻し特約が存在しない契約であっても、取引の実質が明らかに「金銭の貸付」と変わらないケースが少なくなく、法の抜け穴を突いた“合法風ヤミ金”が蔓延している現実があります。


法律形式と経済実態が乖離する「2社間ファクタリング」

2社間ファクタリングは、売掛先への通知なしに債権譲渡が完結する形式であることから、表面的には貸付けとは異なり、「売掛債権の売買契約」に過ぎないように見えます。しかしその実態は、債権者である企業が将来得るべき売掛金を担保に、業者から一定の金額を「前払い」してもらう仕組みであり、返済責任を実質的に負う構造が出来上がっていることが少なくありません。

売掛先が債務不履行に陥った場合、表向き「リスクはファクタリング業者が負う」とされていても、何らかの形で債権譲渡人が穴埋めする構造が事後的に用意されていることも多く、これはもはや**「形式だけ貸金ではない」とする言い訳に過ぎない**のです。


「買戻し特約なし=適法」という思考停止

日本貸金業協会は、自らの注意喚起において「買戻し請求権が契約に付されている場合」や「債権の買戻しが実質的に約定されている場合」に違法性が高いと述べています。しかし、問題の本質は買戻し特約の有無ではなく、「返済義務を負わせる取引構造」自体の存在です。

たとえば、買戻し特約が存在しない契約であっても、次のような実務が横行しています。

  • 譲渡人が売掛先への通知を拒むため、支払先を業者名義の口座とする「通知代行」や「集金代行」と称した介入
  • 売掛金が支払われなかった際、譲渡人に対して新たなファクタリング契約を強要するロールオーバー型の資金繰り
  • 初回契約は「売買」としながらも、2回目以降に返済遅延時の保証契約や公正証書作成を求める

これらは、たとえ契約書面上に買戻し条項が存在せずとも、経済的実態としては**「貸付けと変わらない負債性取引」**であり、極めて悪質です。


「年率換算」の誤魔化しと、手数料の隠れた高利性

ファクタリング業者が手数料を設定する際、「これは利息ではなく、債権の買取価格と債権額の差である」と主張します。しかし、実際に年率換算すると利息制限法や出資法を大幅に超える金利となるケースも珍しくありません。

例えば、30日後に回収予定の売掛金100万円に対して、80万円しか支払われないとすれば、その手数料は20万円。年率換算すれば年利300%を超える暴利に相当します。このような手数料を「自由契約だから適法」と片付けるのは、社会的には到底容認できるものではありません。


貸金業界自身が「ヤミ金排除」の旗を降ろしてはならない

日本貸金業協会は、貸金業者のコンプライアンス向上と消費者保護を目的に掲げて設立された団体です。その立場から、ファクタリングを偽装したヤミ金に警鐘を鳴らす姿勢は評価されるべきです。

しかし、協会が示す基準が「形式的な契約条項の有無」にとどまり、実質的な違法性の判断に踏み込まないのであれば、結果としてファクタリングを隠れ蓑としたヤミ金業者を容認していることと同義になってしまいます。

貸金業界には、こうした擬装的手法に対して、「形式ではなく実質」で判断する法的整備を求める声を、もっと強く発信していただきたい。さらに言えば、高リスクを理由にした高収益ビジネスを黙認するのではなく、弱者の立場に立った制度的対処を推進する責任があると考えます。


今後に向けた提言 – 線引きの明確化こそが被害根絶の鍵

この問題を解決するには、以下の点を明確に線引きし、制度的に規制を整備すべきです。

  1. 「金銭交付の対価」が債権買取を装ったものであるかの実態調査を義務化
  2. 手数料が利息制限法を超過する場合は「みなし貸付」と見なす立法化
  3. 「買戻し条項なし」の契約でも、実質的な返済責任が発生する取引には規制を及ぼす
  4. ファクタリング業者に対する登録制の導入と、実態審査の強化

このような枠組みが整備されれば、形式だけ整えた合法風のヤミ金業者は排除され、本来の意味でのファクタリング=債権流動化による健全な資金調達手段としての価値が再評価されるはずです。


最後に

私たちは、「ファクタリング」という言葉に安易に救いを求める前に、その取引の実質を見極める必要があります。そして、業界側は今こそ、そのグレーゾーンにメスを入れるべきです。形式的な正当性を装った“ヤミ金まがい”の資金提供を見逃してはなりません。

真に健全な金融業界の実現のためには、「形式でなく実質を見る」覚悟が、今、求められています。