「二重譲渡がバレると最悪刑務所行きも!?」
このようなセンセーショナルで煽情的な見出しを、平然と公式サイトに掲載するファクタリング業者が、今も堂々と営業を続けている現実がある。
そこには“新しい資金調達方法”を装った、極めて悪質な情報操作と利用者への心理的圧力が存在する。
まず指摘しておきたいのは、この文章全体に漂う“法的事実を歪めた脅し”である。
二重譲渡が直ちに逮捕につながるような書きぶりだが、実際には債権の譲渡が複数回行われること自体は違法ではない。問題となるのは、その過程で欺罔(ぎもう)行為があった場合、つまり最初から返済の意思がない、資金詐取を目的とした虚偽の契約だった場合に「詐欺罪」等が問われるという話であって、一般的な“二重譲渡=刑務所”という構図は成り立たない。
つまり、ファクタリングの基礎知識がない中小企業主や個人事業主に対し、「あなたの契約が違法かもしれない」「下手をすれば逮捕されますよ」と暗に示すこのような文言は、事実誤認を前提とした心理的脅迫に近い。ファクタリング業界の内部からも「さすがにやりすぎだ」「恐怖マーケティングだ」との声が上がっても不思議ではない。
さらに問題なのは、こうした文言が「ファクタリング会社の公式サイト」で公開されているという点だ。
「資産を売って即“資本”にコンバートできる」など、財務上のインパクトをあたかもポジティブに表現しているが、実際には売掛債権を現金化することで本来のキャッシュフローの把握が困難になり、財務の透明性が大きく損なわれることも多い。しかもその売却価格に10%〜30%以上の手数料が乗ることを、巧妙に隠しているケースもある。
今回の「二重譲渡は刑務所行き」と煽る文言には、もう一つの目的があると考えられる。
それは、他社に売掛債権を二重に譲渡されることへの“牽制”であり、利用者に「他に譲渡するとお前が捕まるぞ」と釘を刺している構図である。
だが、本当に重要なのは、なぜ二重譲渡が発生するのか、なぜ利用者がそのような苦渋の選択をせざるを得ないのかという背景への配慮が一切ない点だ。
- 複数社から取引を打診されるも、資金繰りに追われて選べない
- 契約条項の内容を正しく理解できず、形式的に譲渡が重なってしまった
- 回収リスクや支払い期日のズレを考慮しなかったファクタリング会社の審査ミス
こうした要因に目を向けることなく、一方的に「刑務所行き」「逮捕リスク」とだけ強調する姿勢は、まさに業者の都合しか考えていない言葉の暴力である。
このような“疑似法律知識”をもとに顧客を萎縮させ、契約を一方的に有利に進めようとする姿勢は、今後のファクタリング業界全体の信頼性を著しく損なう。もしこれが銀行や金融庁の監督下にある業態であれば、とうの昔に行政指導の対象となっているはずだ。
ところが、現在の2社間ファクタリング業者の多くは、貸金業登録も不要なまま実質的な融資ビジネスを展開しており、規制の網からもすり抜けている。
「借りていないから安心です」「融資じゃないから違法じゃないです」という歪な理屈の上に、“逮捕リスク”という重たい言葉をユーザーにぶつける姿勢は、もはや業界の倫理崩壊を象徴している。
このような業者の存在を野放しにしていてはならない。行政・消費者庁・金融庁、さらには業界団体を装う任意団体に至るまで、早急に「誤認誘導的表現の規制」や「広告表現ガイドラインの明示」を行うべき時機にきている。
我々が本当に警戒すべきは、“二重譲渡”ではなく、“二枚舌”のファクタリング業者の存在なのだ。

