警察が知らない「2社間ファクタリング」の闇──この国の法治は誰のためにあるのか

ファクタリングのトラブル

ある日、筆者は都道府県警の相談窓口に電話をかけ、2社間ファクタリングに関する一般論を聞いてみた。返ってきた答えに、正直言って驚愕した。「2社間ファクタリングとは何ですか?」──相談担当者は、この問題の存在すら知らなかったのである。

言葉を失った。ここまで社会問題化し、ネット上には「ファクタリング詐欺」「二重譲渡トラブル」「実質ヤミ金」などの相談が溢れ、実際に中小事業者が人生を壊されている現実があるというのに、警察はその存在すら知らない

これは単なる知識の不足ではない。公権力の無関心、制度的怠慢、そして法整備の放棄である。

「民民間のトラブルです」で済まされる闇

2社間ファクタリングは、形式上は「債権譲渡による資金調達」という契約構造をとっているが、実態は非常にグレーである。売掛先に通知しないまま債権を譲渡し、さらに債権回収義務は譲渡人(資金調達者)に残される。そのため、支払義務のない“返済契約”に極めて近い構造となる。

だが、現行法ではこれを“貸金業”とも“金融詐欺”とも明確に定義できていない。結果として、「債権譲渡契約だから合法」という詭弁がまかり通り、悪質業者が“合法ヤミ金”として好き放題に利用者を追い詰めている。

この仕組みの犠牲になった中小企業の経営者が、資金繰りに窮し、契約違反を理由に数百万〜数千万円の損害賠償請求を受け、自殺にまで追い込まれている現実すらある。それにもかかわらず、警察が知らない? それはもはや無知ではなく、放置であり、職務放棄である。

法整備がないから動けない? それでも守るのが警察だろう

もちろん、警察官個人にすべての金融知識を求めるのは酷かもしれない。だが、ここで問題にしたいのは、「現場でどう対応するか」という体制そのものである。

実際、警察に相談しても、「それは民事ですから」「弁護士に相談してください」の一点張りで門前払いを受けたという声は後を絶たない。たしかに2社間ファクタリングは民民の契約であり、法技術的には“民事不介入”が原則である。だが、それが“詐欺的契約”や“信用毀損”“脅迫まがいの取り立て”に発展しているならば、刑事事件として取り組むべき問題に他ならない

現状、2社間ファクタリングの名の下で、契約書を偽造されたり、虚偽の供述を強要されたりする被害も報告されている。明確な詐欺や強要が背後にある可能性があるのに、それを警察が「契約だから」と一蹴してしまってよいのか。法のグレーゾーンを放置してきた国家の怠慢が、ここに凝縮されている。

被害者が声を上げなければ、闇は続く

2社間ファクタリングの問題が深刻なのは、それが“見えにくい”構造であるからだ。被害者は「契約した自分が悪い」と責められ、相談しても「自己責任」と突き放され、孤立し、沈黙する。

この構造は、かつての多重債務問題やサラ金問題と極めて似ている。国が何もしなければ、悪質業者は次の一手を打ち続ける。新しい手口、新しい言葉、新しい契約形式で──。そしてそのたびに、警察はまた「知らなかった」と言い訳をするのか。

結語:いま求められているのは、法整備ではなく“意志”である

警察が2社間ファクタリングを知らなかったという事実は、単なる恥ではない。この国の法治が、資本に従属し、現実の被害者を見ようとしない構造であることの象徴である。

いま求められているのは、立法府による明確な制度設計とともに、警察がこうした“見えにくい搾取構造”に対して、調査・情報共有・内部研修といった最小限の対応を行うことである。

知らない、分からない、法整備がない──そんな言葉で、泣き寝入りする市民が増え続けている。それでも、あなたたちは“市民の安全”を守る立場にいるのではなかったか?