ファクタリング――その本来の目的は「債権を売却して資金調達し、リスクを転嫁する」健全な金融スキームです。しかしその裏で、詐欺的手法を駆使し、「債権売買を偽装するヤミ金融」が急速に増えています。特に2社間ファクタリングは、その“合法的な仮面”に隠れて、中小事業者を苛烈に締め上げているのです。
1. 偽物は巧妙に“債権売買”の冠を掲げる
PDF『債権の売買を偽装するヤミ金融』では、「貸金業登録を避けるため、ファクタリングを装う非正規貸金業者(似非ファクタリング)が急増している」と指摘されています。また、実質的な年利は驚くべき“100〜360%”に達するとも報告されています。
これは単なる極端な例ではない。都市部から地方にまで被害が広がり、皮肉にも「貸金業の規制強化」が悪用され、警察の眼をかいくぐる温床となっているのです。事業者向けヤミ金は、登記を巧妙に使って“合法性の虚構”を演出し、倒産寸前の企業を巧みに追い詰めているのです。
2. 登記は“正しさ”ではない──被害の隠れ蓑
PDFは、債権譲渡登記により“対抗要件”を得ることで、似非ファクタリングの実態が浮き彫りになると述べています。実際、登記された419件のうち67%がファクタリング業者、うち264件が貸金業登録なしという事実があります。
しかし、「登記がある=正統な債権売買」という前提は誤りです。むしろ登記は、被害者の不安を煽り、正義の盾として使われる“欺瞞の装置”に過ぎません。PDFが推計する“年間被害件数920件、貸付金額110億円、被害総額約18億円、被害者数約1,000件”という数字は、もはや対岸の火事ではありません。
3. 邦内初摘発は大阪警察だけ――他は見て見ぬふり
PDFによれば、似非ファクタリングの摘発は全国ほぼゼロ。東京都内でも検挙なしで、大阪府警のみが2017年前半に摘発に成功した事例が記録されています。この「知る者が調査し、知らない者は流す」態度――それが許されてよいのでしょうか。
4. ケーススタディ──資金調達の“地獄”へ誘う手口
実例として取り上げられたA社のケースは典型的です。担保に300万円の売掛債権を渡し210万円を借りるも、高額利息で再借入。そしてついに売掛金を回収した後も、債務者宛に債権譲渡通知が送られ、売掛債権が“仮差押さえ”されて事業停止の危機に陥ったとあります。
この際、証拠はほとんど支払った金額を証明する“領収書”だけ。しかもこの領収書が実際の借入より多額に改ざんされていた――…まさに「借金ではなく債権を売っている」という建前こそが“悪質な武器”となっている事実です。
5. 成功した判決も、焼け石に水
大阪地裁は2017年3月3日、「ファクタリング契約ではなく貸付だ」と判断し、過払い金約467万円の返還を命じました。しかしこれは例外的ケース。大多数の被害者は訴訟に至る前に消耗し、泣き寝入りしているのが現状です。
民事訴訟では、債務者が「債権回収業務を委託されただけ」と逃げる一方で、似非ファクタリング側は債権譲渡通知や登記を盾に、非通知の主張すら受け入れて排除。正当な主張が、形式の前に潰されてしまう構造なのです。
6. 消費者保護の枠外に追いやられる事業者
かつて消費者金融が暴力的取り立てで社会問題化したように、「事業者向け高利ヤミ金」は今まさに次なる社会危機となっています。PDFの最終章も、「貸金業法の改正で高リスク貸付環境を整備すべき」と訴えています。
制度整備の不備と警察・行政の無策が合わさることで、事業者は借金漬けにされ、経営も壊され、家族まで翻弄されているのが現実です。
7. 結語:仮面を剥がされるまで沈黙させられる
今、私たちが直面しているのは、「債権売買の合法」の名のもとに、事業者を巧みに欺き、絞り取る新たな金融犯罪モデルの台頭です。PDFで明示された被害規模、摘発遅れ、判例の限界――すべてが「制度の死角」を象徴しています。
警察、金融庁、立法機関――これらが“現実の被害”を直視し、即時的な対応を取らねば、日本の中小企業は再び“金融の奴隷”として踏み潰されます。被害者一人ひとりの声を拾い上げ、法を構築せよ。無策と放置が続く限り、2社間ファクタリングは“合法ヤミ金”として次々と犠牲を重ねていくことでしょう。

