「債権譲渡通知」で経営破綻へ――2社間ファクタリングの冷酷な現実

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

「契約書にサインしてください。それと、この債権譲渡通知書にも……」。
ファクタリング業者の巧妙なセールストークの裏には、倒産への落とし穴が潜んでいる。

2社間ファクタリングとは、資金繰りに困った中小企業が、売掛債権を第三者に売却し即時資金化する手法である。しかし、これは決して「手軽な資金調達」ではない。とりわけ問題なのは、契約時にサインを求められる“債権譲渡通知書”の存在だ。

一部の業者では、契約時に記名・押印された通知書を保管し、日付を空欄にしておく。そして、支払い遅延などが生じた瞬間、すかさず内容証明郵便で取引先に発送する。送付された取引先は「売掛先がファクタリング会社に債権を譲渡していた」と知り、支払い先を変更せざるを得ない。ここから事態は急転直下する。

なぜか?
企業の信用とは、金融機関ではなく「取引先」との信頼関係に支えられているからだ。唐突にファクタリング会社から通知が届けば、取引先は「資金繰りが逼迫している」「経営が怪しい」「今後の取引はリスクがある」と判断する。現場の営業担当がいかに関係を築いていようとも、内容証明一通ですべてが水泡に帰す。

この時点で、すでに「売掛金の差し押さえ」などという言葉では済まされない事態になっている。これは事実上の「経営破綻の始まり」である。

さらに悪質なのは、こうした通知の送付を「債権保全」などと正当化し、「不正をしたあなたが悪い」と責任転嫁する業者の論理構造だ。確かに、2重譲渡や虚偽債権などを用いた不正ファクタリングが後を絶たないことは事実である。だが、それをもって「信用に基づく資金繰り支援」などと称し、事業者に無限のリスクを背負わせる手法が是認されるわけではない。

本質的な問題は、2社間ファクタリングに「透明性」がないことである。3社間ファクタリングであれば、取引先の合意をもって債権譲渡が行われる。だが、2社間の場合、相手先に知られることなく債権を売却できるという“利便性”の裏に、相手の信頼を裏切る“裏技”が潜んでいる。この矛盾を見て見ぬふりをする事業者は、知らず知らずのうちに自らの首を絞めているのだ。

そして一部のファクタリング会社は、この構造的リスクをむしろ「武器」として用いている。
「払えなければ、取引先に通知を送りますよ」
「支払い遅延すれば、即座に売掛金を差し押さえます」

これではもはや融資でも資金調達でもなく、「脅し」である。

こうした実態を知らずに、「即日現金化」「ブラックでもOK」などと甘い言葉に釣られる事業者は後を絶たない。そして、いざトラブルが起きれば、内容証明一通で得意先との関係は破壊され、業績は急降下、資金繰りはさらに逼迫し、再びファクタリングに頼る――この負のループに陥るのだ。

果たして、これは本当に中小企業を支援するビジネスモデルと言えるのか。
一歩間違えば、合法的な「経営破壊工作」である。いや、もはや“合法”という言葉すら空々しい。違法ではないが、極めてグレーで反倫理的。少なくとも、日本社会における「信頼」や「信用」といった根本価値観とは真逆を行く資金調達手法だ。

事業者が本当に生き残りたいなら、目先の現金ではなく、長期的な信用の維持を第一に考えるべきだ。そして、ファクタリングを“最終手段”として考えるにしても、少なくともこうした「通知を盾に恫喝する業者」は、資金の供給者ではなく「信用の破壊者」であることを見抜かねばならない。