「金融のプロが騙される」?――自己破綻した2社間ファクタリング業界の欺瞞

ファクタリングのトラブル

架空債権詐欺に“被害者ヅラ”する資格はあるのか

ついにここまで来たか――というのが率直な感想だ。

ファクタリング業者が自ら運営するサイト「ファクタリング詐欺・架空債権まとめ」には、まるで他人事のように「詐欺の手口が巧妙すぎた」「金融のプロでも騙される」などと記載されているが、果たしてこの開き直りが許されるものだろうか。

とりわけ注目すべきは、あるイベント企画会社の社長が、3億円相当の架空債権をファクタリング業者に買い取らせて逮捕された事件だ。
この社長は100社分の偽装債権で45億円もの資金を騙し取っていたとされている。そして、それに“まんまと引っかかった”のが、開業間もないファクタリング会社だった――とされている。

だが、ここにこそ2社間ファクタリング業界の病理が詰まっている。
なぜ、そんな杜撰な審査で億単位の債権を買い取ったのか?
なぜ、架空の売掛金に対して金を払い込んだのか?

答えは一つ。
「売上欲しさ」「実績作りのため」という、あまりにも安易な欲望によって、リスク管理を完全に放棄していたからである。

■“金融のプロ”という自己矛盾

サイト上では、詐欺被害に遭ったことを「被害者」として記述しておきながら、その直後に「金融のプロでも騙される巧妙な手口だった」と締めくくっている。
だが、ここに矛盾がある。

本来、ファクタリング業者は「審査のプロ」でなければならないはずだ。特に2社間ファクタリングでは、買掛先に通知を行わないため、売掛債権の存在確認が難しい
だからこそ、買い取る側には通常以上のデューデリジェンス(真偽確認)能力が求められる。

それにもかかわらず、架空債権を見抜けず、詐欺の片棒を担がされてしまった。
これはもはや、「プロ」とは呼べない。自ら“金融のプロ”を名乗るならば、責任は一層重くなるはずだ。

にもかかわらず、「悪いのは詐欺師で、我々は被害者」という構図を演出する姿勢には、驚きを超えて呆れすら覚える。

■「実績作り」が招いた必然的な崩壊

この詐欺事件が発生した背景には、2社間ファクタリング業界特有の「自転車操業構造」がある。
多くの新興業者が、実績を積むためにリスクの高い案件にも手を出し、少しでも売上を作ろうと焦る。そしてその焦りが、審査の甘さとなって現れる。

特に近年では、融資とは違って貸金業法の規制を逃れやすいという理由で、元手の少ないスタートアップ系事業者が2社間ファクタリングに殺到している
「売上が必要だから買う」
「断ったら競合に取られる」
「最初は多少リスクを取っても認知度を上げたい」

そうした浅はかな経営判断のもと、実体の乏しい“数字合わせ”の債権に数億円を投じるという愚行が繰り返される。
つまり、この詐欺事件は「騙された」のではない。
「騙されるような地盤で商売していた」こと自体が問題なのである。

■“業界の闇”を他人事にしてはいけない

この種の詐欺事件を取り上げて、「こんな詐欺師もいるから注意してくださいね」と啓発しているつもりなのかもしれないが、これは極めて危険な論理転換だ。

なぜなら、2社間ファクタリングそのものが「債権譲渡」の仮面をかぶりつつも、
・債権の存在確認が不十分なまま取引する
・通知や登記を行わず、買掛先を“黙らせて”処理する
・架空債権であっても、よほど巧妙なら通してしまう
という、“制度上の脆弱性”を放置したまま成立しているビジネスだからだ。

その構造を是正しようともせず、詐欺だけを切り離して「悪質」とラベリングする姿勢は、まるで温床を提供しておきながら「ウイルスが悪い」と言っているようなものだ。

■詐欺師とファクタリング業者の“共依存関係”

さらに言えば、こうした詐欺事件は、ファクタリング業者の“甘さ”を利用して利益を得ようとする犯罪者と、売上のために何でも買い取る業者との間の、ある種の“共依存”によって成り立っている。

・業者は売上と件数を稼ぎたい
・詐欺師は見せかけの書類さえ整えれば、億単位の金を手にできる
・双方に“都合が良い幻想”が成立してしまう

これはポンジ・スキームにも通じる。最初に少額の債権をきちんと買い取らせて信用を積ませた後、徐々に金額を上げてゆき、最終的に大型の偽装債権を売りつける。
これは犯罪だが、その犯罪に“入口”を与えてしまったファクタリング業者の責任も極めて重い

■「金融」ではなく「金融モドキ」

最後に一つ、忘れてはならないことがある。
2社間ファクタリングは「金融行為」としての体裁を取っているが、実際にはその多くが**法的枠組みの外側にある“金融モドキ”**だという点だ。

・法定利息の制限を回避するために債権譲渡を偽装
・登記をしないために重複譲渡や架空債権のリスクが常態化
・裁判になると、しばしば「実質的に貸金」として敗訴する事例が出ている

こうした危うい事業構造に身を置きながら、「詐欺に遭った」と被害者を装うのは、まさに加害者が泣き寝入りしているかのような滑稽さである。


■結語:「プロ」であるなら、まず己を律せよ

ファクタリング業者が、詐欺事件を他人事として紹介し、「我々も騙された被害者です」と語ること自体が、業界の信用失墜を加速させている。
本来プロフェッショナルとは、自らの判断力と見極めに責任を負う立場であるはずだ。

2社間ファクタリングの仕組みそのものが、詐欺の温床となっている限り、「被害者ヅラ」では済まされない。今こそ、業界全体が自浄能力を問われている。

騙されたと言う前に、なぜ騙せる土壌を作ってしまったのか――そこから目を背けてはならない。