ファクタリングの仮面を剥げ――企業を蝕む「合法を装った闇金」への警鐘

ファクタリングのトラブル

「業績は悪くないはずなのに、なぜか会社が潰れそうだ」。そうした声が、中小企業やIT系スタートアップの経営者から相次いで聞こえてくる。その原因の一つとして、近年問題視されているのが「2社間ファクタリング」という名の抜け道金融だ。

東京の吉原隆平綜合法律事務所が公開した事例によれば、あるIT企業の経営者が、売掛金の未収によって一時的に資金繰りに苦しみ、ファクタリング業者を利用したことが、むしろ経営危機の直接的な原因となったという。

「借りては返すを繰り返すようになってしまい、事業の存続に不安を感じて相談に来られた」と、同事務所の弁護士は語る。

表面上は“借金ではない”とされるファクタリング。だが、実態はどうか。債権譲渡という法形式を使いながら、実質的には貸金そのもの。しかも、その手数料(名目上は「ディスカウント率」などと呼ばれる)は、年利換算で数十%に及ぶことも珍しくない。この構造は、明らかに貸金業法や利息制限法を潜脱するスキームに他ならない。

■合法の皮をかぶった違法性

このような“グレー”を通り越した“ブラック”な実態は、もはや業界の共通認識に近い。ファクタリング業者の中には、そもそも「債権譲渡通知」すら送らず、売掛先に知られない形で取引を進め、回収不能時には法的な手段をちらつかせて圧力をかける者もいる。

「いわゆるヤミ金に近いグレーな業者もあり、貸金業法や利息制限法の潜脱ではないかと強く交渉した」と吉原弁護士は明言している。

ここで注目すべきは、「違法ではないが不適正」であるという、金融の“グレーゾーン”に居座る構造的悪質性だ。行政処分を受けることなく、金融庁の監督も及ばず、倫理なき「合法」だけが拡張していく現実。それが、2社間ファクタリングという市場の本質なのである。

■スキームの構造的欠陥

ファクタリングはもともと、売掛金を早期現金化することで、資金繰りを支援する仕組みだ。しかし、2社間モデルでは、売掛先に通知をしない代わりに、すべての責任が利用企業側に集中する。

資金調達のスピードを優先するあまり、債権の真正性や信用性は形式的なチェックで済まされ、実際には「信用力に問題がある企業ほど、高手数料で搾取される」構造に陥る。そして、繰り返される利用によって、ファクタリングは“常習化”し、いわば金融依存症を生む。

それはもはや、資金調達ではなく「高利金融」である。もしくは、ファクタリングという名の高利貸し=変種の消費者金融である。

■再生を阻むファクタリング依存

ファクタリングによって資金をつないでいる間に、企業体力は徐々に削がれていく。手数料の支払いでキャッシュフローは慢性的に悪化し、いざ本格的な金融支援が必要となったとき、信用はすでに毀損されている。金融機関や支援機関に相談しても、「ファクタリング利用歴がある企業は対象外」とされるケースも少なくない。

事実、吉原事務所の事例でも、再生の鍵は“ファクタリングとの決別”だった。弁護士が介入し、違法性を追及しつつ業者と交渉、経営再建の障壁を一つひとつ取り除いたことで、ようやく企業は立ち直ることができたという。

「ファクタリング業者への対応に苦慮した場合、専門的知識・経験のある弁護士に相談されることをお勧めします」という呼びかけは、まさに現場の切実な声である。

■“金融包摂”の裏で進行する搾取

近年、ファクタリング業界は「フリーランス支援」「中小企業の資金調達革命」といった言葉で脚色され、さまざまなメディアで取り上げられるようになった。中には、大手金融機関と提携する事業者も登場し、あたかも「新しい金融インフラ」であるかのように振る舞う。

だがその実態は、経済的弱者を狙い撃ちにし、返済能力ではなく“困窮度”に着目したビジネスである。借りては返す、また借りる。そうして利息ではなく「手数料」で利益を上げる構造は、合法を装った搾取の温床となっている。

■法規制の強化こそ急務

現在、2社間ファクタリングに対する明確な法規制は存在しない。貸金業ではないという建て付けにより、業者は登録も監督も不要なまま、野放し状態で営業を続けている。これは明らかに、立法の不備であり、消費者保護の観点から看過できる問題ではない。

「資金繰りに困った企業を、より深い泥沼へ引きずり込む」。そんな金融サービスを、“イノベーション”や“フリーランス支援”と呼ぶ時代は、もう終わらせなければならない。