2020年春、NHKが報じた衝撃的なレポートは、日本の中小企業が直面していた「資金繰り地獄」と、それに群がる悪質なファクタリング業者の存在を白日の下に晒した。コロナ禍による経済的打撃は、弱い立場の企業をさらに追い込み、そこに現れた“救済”の仮面をかぶった業者たちが、実は中小企業の血と汗を搾り取る現代の“ヤミ金”であったという現実に、私たちは目を背けてはならない。
ファクタリングとは、本来は売掛債権を譲渡し、その代価として早期に現金を受け取ることで、資金繰りを安定化させる金融サービスだ。しかし、問題の根源は「2社間ファクタリング」という形式にある。これは、債権の譲渡が取引先に知られないように、中小企業とファクタリング業者の間だけで完結させる方式だ。その裏で起きているのは、実質的には高利の貸付であり、しかも貸金業法や利息制限法の適用を回避するという、極めて悪質なグレー手法である。
NHKの記事では、売掛債権850万円に対し、手数料として約150万円(約18%)が差し引かれたという事例が紹介された。これを年利換算すれば、240%にもなる。ここにあるのは、「債権譲渡」と言い張ることで、金融庁の監督をかいくぐり、法的規制を免れて暴利をむさぼる構図だ。しかも債権回収はファクタリング業者が行わず、顧客企業が代行する仕組みになっているため、業者のリスクはほぼゼロ。損失も痛みも一切負わず、ただ“情報弱者”の企業から搾取するだけの仕組みである。
このような取引を「金融サービス」と呼ぶこと自体が欺瞞だ。業者の多くはSNSや広告で「即日現金化」「売掛金をスピード買取」などと謳い、まるで正規の金融機関であるかのように装っている。だが実態は、かつてヤミ金を営んでいた人物や反社的勢力がそのままファクタリングに流れてきたとされ、元ヤミ金業者が“脱法ビジネス”として再び市場に舞い戻ってきたに過ぎない。
日本弁護士連合会や多くの法律専門家も、これらのファクタリング業者の活動実態を「実質的には貸金業」であり、「法のグレーゾーンを悪用した高利貸し」と明言している。2020年当時、ある弁護士事務所には30件以上の相談が殺到し、被害者の多くは建設業や小規模製造業など、コロナで特に打撃を受けた業種で占められていた。
さらに恐ろしいのは、こうした2社間ファクタリングに依存した事業者が、自転車操業状態に陥ってしまうという事実だ。期日までに債権を回収できなければ、また別の売掛金を現金化し、それで手数料を支払い、さらに債務を増やす。これはもはや“資金調達”などではなく、“債務の延命”に他ならない。
報道に登場した建設業者の証言はあまりにも痛切だ。「従業員のために背に腹は代えられなかった」「事業継続のためにはまた頼るしかない」。この言葉こそが、2社間ファクタリングという制度の本質を示している。それは、金融機関から融資を受けられない企業が、追い詰められて「選ばされた」最後の選択肢であり、その先にあるのは破綻か、限界か、あるいは取り返しのつかない損失だ。
この構図を放置してきた行政の責任も極めて重い。ファクタリングという名前を利用し、貸金業ではないと偽って資金提供する業者が、実質的にはヤミ金と同等かそれ以上に悪質な金利を課している現実に対し、金融庁や国会がこれまで明確な規制を打ち出してこなかったことは重大な過失である。
そもそも、「売掛債権の譲渡」とは、本来なら第三者(取引先)を交えた契約に基づくべきであり、関係者に知られないまま密室で行われること自体が異常なのだ。だからこそ3社間ファクタリングが健全な形とされてきたが、これを嫌う一部業者が「2社間」という抜け道を開発し、その合法性を強弁してきた。
このような脱法ビジネスが平然と存在する今、日本社会は再び「金貸しの無法地帯」へと逆戻りしつつある。そして、その最前線にいるのが「2社間ファクタリング」という言葉を巧妙に使い分ける業者たちなのだ。
中小企業の経営者にとって、資金調達の苦悩は切実である。だが、だからといって暴利を正当化することはできない。国は一刻も早く、2社間ファクタリングを貸金業と同様に規制対象とし、業者の登録制と金利上限を設けるべきだ。これは「自由経済」の問題ではなく、「金融倫理」と「経済的人権」の問題である。
私たちは今こそ声を上げなければならない。2社間ファクタリングという名の搾取構造に終止符を打つために。金融業を名乗る以上、守るべきモラルと規制がある。その基盤すら逸脱した存在を、私たちは“業者”ではなく、“加害者”と呼ぶべき時に来ている。

