――その成功談、誰の得になるのか
最近、ある2社間ファクタリング業者のサイトに掲載されていた体験談が、業界関係者の間でちょっとした話題になっている。曰く、「営業マンの的確なアドバイスで経営改善し、今では利益拡大のためにファクタリングを使っている」――そんなサクセスストーリーが2件、まるでドラマの一場面のように並べられていた。
だが、ちょっと待ってほしい。
ファクタリングは「売掛債権を早期に現金化できる」点においては、確かに便利な仕組みではある。だが、それはあくまで一時しのぎのキャッシュ確保策であり、構造的に継続利用を前提とするビジネスモデルにすぎない。
今回紹介された体験談には、まるでファクタリングが「経営改善のメソッド」や「経営伴走型サービス」であるかのような表現が並ぶが、その実態はどうなのか。以下、現場でよく聞く“被害者”の声や制度上の問題点と照らしながら、冷静に読み解いていこう。
【作り話に見える理由】
まず第一に、これら体験談が持つ不自然さだ。
「中国の輸出規制で売上が低迷したが、営業の助言で経営改善し、今は利益のためにファクタリングを使っている」
この話、もし本当であれば拍手を送りたい。だが「売上低迷→ファクタリング導入→経営改善→利益拡大→引き続きファクタリング利用」という流れには、大きな違和感がある。
そもそも利益を出している状態でファクタリングを使う必要があるだろうか?
言い換えれば、**「資金繰りに困っていない会社が、わざわざ高コストな資金調達手段を継続利用する理由があるのか?」**という点だ。
手数料は5~30%が相場、数日〜数週間の資金先取りのために、月利に換算すれば軽く年利数百%に跳ね上がるケースもある。これを経営が健全な会社が自発的に使い続けるなど、到底信じがたい。
それに、売上3億円規模・従業員18名というそこそこ中堅クラスの会社が、資金ショートから立ち直るための打ち手として「営業マンの助言」でファクタリングを選んだという話は、あまりにも説明が雑だ。
【ファクタリング営業の常套句】
今回のような体験談にたびたび出てくるのが、「親身な営業」「経営相談にも乗ってくれる」「資金繰り表を一緒に作る」といった美辞麗句である。
実際の現場ではどうか?
多くのファクタリング営業マンは金融や経営の専門知識を持たず、マニュアル通りの対応をこなすだけであることが多い。
「資金繰り表を作る」と言っても、実態は“必要最低限の入出金表をExcelでまとめているだけ”といったケースも珍しくない。
そもそも、本当に経営改善を目指しているなら、**「まずファクタリングから卒業させる」**のが真っ当な支援ではないか?
にもかかわらず、今回の体験談では、どちらの会社も“今もなおファクタリングを使い続けている”ことが明記されている。
これはもう、経営改善ではなく**“依存化”**だ。
【貸金業法違反リスクの潜在】
2021年8月18日に公開された弁護士・荒木誠氏のコラム「ファクタリング取引の法律問題」でも触れられている通り、ファクタリングのなかには**「形式だけが債権譲渡、実質は貸金」**と見なされるものも多い。
荒木弁護士は明言する。
「ファクターが回収不能のリスクを負わない契約は、担保を取った貸金と評価される可能性がある」
つまり、回収リスクを利用企業側に残したまま「売掛債権を買い取った」とする契約は、見かけ倒しであり、貸金業法違反の温床になりうるというわけだ。
こうしたリスクを伏せたまま、「安心・信頼・経営改善」といった単語で飾られた体験談が並ぶのは、非常に不誠実である。
【現場は「脱出」できない企業で溢れている】
筆者が過去に取材した中小企業の多くが、ファクタリングを「延命装置」と表現していた。
- 「一度使うと抜け出せない。使わざるを得ない」
- 「ファクタリングに払う手数料のために、また資金が足りなくなる」
- 「いつか脱出したいが、気付けば数カ月連続で利用している」
このような声が山のように寄せられる一方で、今回のような“成功体験談”がネット上で美化され、拡散されていく。そのギャップは、あまりに現実と乖離している。
■ 結論:ファクタリングは「良い話」で終わらない
もし、これらの体験談が本当に実話であれば、当該企業の経営者には敬意を表したい。しかし、それでもなお、ファクタリングの危険性を一般化して語ることには慎重であるべきだ。
本来、資金繰りに悩む企業には、まずは銀行融資、次に制度融資、そして信用保証付きの金融支援など、他に検討すべき選択肢が山ほどある。そのうえでファクタリングを選ぶなら、せめて「一時的」であるべきだ。
「ファクタリングを使っている限り、経営改善は達成されない」
――この前提を踏まえない限り、どれだけ綺麗な体験談が並ぼうとも、それは**“構造的貧困”を美化する危険な言説**に過ぎない。

