AIで加速する“偽装貸金”の量産工場──ファクタリング業界が踏み越えてはいけない一線

ファクタリングの違法性と契約について

AIとファクタリング。両者が出会うことで何が起きるか。PR TIMESに掲載された某社のリリースは、これを「革新」として紹介した。しかし、目を凝らして読めば読むほど、見えてくるのは倫理の崩壊と法的グレーゾーンの拡大である。

今回のリリースは、一見すれば技術革新だ。AIによるスコアリング審査、クラウド会計連携、自動化された手数料率の設定。だが、その文面の至るところに登場するのが、**「返済」「分割払い」「毎月の支払額」**といった、明らかにファクタリングの用語体系とは異なる言葉である。

これは単なるミスではない。ファクタリングという名を借りた“貸金業的スキーム”が、いよいよ正体を隠しきれなくなっている証拠だ。


■ ファクタリングに「返済」は存在しないはずだ

そもそもファクタリングとは、「売掛債権の譲渡」である。形式上、売掛先(=得意先企業)が支払う代金を、債権譲渡によってファクタリング業者が受け取る。そのため、売掛金を早期に現金化する企業(=売主)は、資金を“返す”立場にはない。

にもかかわらず、リリース中に繰り返し使われるのは「返済」「支払い」「分割払い」といった言葉。これは何を意味するか?

実態は、資金を借り、その返済義務が当該企業に残る――つまり“借金”だということに他ならない。

ここにきて、ファクタリングの偽装性が完全に露呈している。


■ 「分割払い」の概念が示す実質貸付の構造

ファクタリング取引において、手数料は通常、一括前払いで差し引かれるものだ。たとえば100万円の売掛債権を売却する場合、90万円が即日振り込まれ、10万円が手数料という具合である。

では「分割払い」とは何か?

これは端的に言えば、「今月は10万円、来月は10万円…」という返済計画の提示である。しかもこれは、実質的に分割債務弁済契約に他ならず、貸金業の典型的構造だ。

この構造を、ファクタリングという名の下に自動化し、AIで与信管理をすることで、企業側が“借金であること”を意識しないようにしている。まさに、ソフトに偽装された貸金業である。


■ テクノロジーで隠蔽される「本来違法」な契約構造

さらに問題なのは、この“実質貸金”がAIのアルゴリズムに包まれることで、審査プロセスや手数料算定のブラックボックス化が進む点だ。

  • 手数料率はAIが決める
  • 支払スケジュールもAIが提示
  • 企業は提案に同意するだけ

ここで企業が「なぜ自分の手数料が高いのか」「なぜ分割払いが必要なのか」を理解する術はない。AIの名のもとに、従来以上に不透明な契約が押し付けられる構図となっている。

しかも、これが「経営支援」「資金繰り改善支援」として謳われている。まるで人道的金融インフラのように装いながら、**実態は貸金業法の網をすり抜ける“スマート債権搾取装置”**なのだ。


■ ファクタリングのAI化がもたらす「債務依存ループ」

ファクタリングの最大の問題点は、“繰り返し使わざるを得ない構造”にある。1回目の取引で手数料10%を支払えば、次月は資金がさらに足りなくなる。そこで再度ファクタリングを依頼。以下、無限ループである。

AI化はこのループを“シームレス”に、そして“自動的”に回す仕組みを提供するだけにすぎない。いわば債務依存ビジネスの回転数を、機械学習で最大化するのだ。


■ 企業側の自衛手段は「選ばないこと」しかない

このような実質貸金に限りなく近い構造をAIで正当化しようとする試みに対して、現在の法律では対抗しにくい。

  • 債権譲渡契約書にすり替えられた貸金契約
  • 表面上は返済義務がないことになっているが、実際には分割弁済スケジュール
  • 法外な手数料率(年利換算で50〜100%超)が「割引」と称して強要される

これに抗う術は、企業側が最初から「使わない」ことしかない。
しかし、AIによるスコアリング審査や即日資金化という“魅力的に見えるサービス”により、弱った企業ほど飛びつきやすい。これが巧妙な罠だ。


■ 最後に:金融の倫理をAIに委ねるな

ファクタリングとAIの融合が目指すものは、決して“企業の未来”ではない。
それは、資金繰りに苦しむ中小企業の「体力」が尽きるまで、搾取を最適化する技術である。

「返済」「分割」「支払いスケジュール」などの用語が登場した瞬間に、それはすでに“ファクタリング”ではない。
AIがそれを合理的に計算したとしても、その合理性は貸金業法・出資法・利息制限法と真っ向から矛盾する危険を孕んでいる。

テクノロジーは万能ではない。
むしろ、AIという仮面をかぶったビジネスモデルほど、私たちはその中身に疑いの目を持たねばならない。
金融の世界において倫理を捨てた技術革新は、支援ではなく破壊でしかないのだ。