2023年10月に施行されたステルスマーケティング(以下、ステマ)規制は、広告・マーケティング業界において大きな一石を投じた。消費者を欺く形での“第三者装い型広告”は、景品表示法の観点からも明確な違法行為であり、行政処分の対象となり得る。だが残念ながら、この規制の網の目をかいくぐるかのように、ファクタリング業界の一部では依然として“虚構の信頼性”を演出する姑息な手法がまかり通っている。
その最たる例が、「建設業者の資金繰りを応援します」と謳うファクタリングサービス「けんせつくん」の公式LPにおける、「掲載実績」と称する“客観性の装い”である。
「紹介されました」は本当に“紹介”なのか?──広告を装う“第三者の声”
同LPには、以下のような文言が並ぶ。
- 「不動産テックラボ様にて、けんせつくんを紹介頂きました。」
- 「ファクタリング情報センター様にて、けんせつくんを紹介頂きました。」
- 「金融情報サイト『マネット』に紹介されました。」
一見すれば「第三者機関がけんせつくんを評価し、取り上げた」ように映るが、実態はまるで異なる。これらはすべて、金銭の対価を支払って掲載されている“記事広告”──つまり「広告」である。
読者が“中立的な情報源”だと錯覚するよう意図された文脈で、「あたかも取材の結果、実力が認められて掲載された」かのような装いをしているのだ。これは明確に、2023年の改正景品表示法が禁じた「表示主体の秘匿」に該当する行為である。
なぜ「第三者のお墨付き」を演出したがるのか?
このような虚偽表示に等しいPR手法を、なぜ企業は執拗に続けるのか? 答えは明白だ。ファクタリングという商品が、そもそも「信用」一本で成り立つビジネスモデルだからである。
金融庁の監督対象でもなく、貸金業登録も不要。顧客からすれば、どこまでいっても「この会社に資金繰りを任せていいのか?」という一点が重要だ。よって、「第三者から評価されている」という“外部からの信頼性”の演出は、成約率を大きく左右する。
だが、そこに正当な報道・評価ではなく、カネで買ったPR記事を使い、あたかも“実力で選ばれた”ように偽装するのは、もはやビジネス倫理以前の問題である。
ステマ規制は“表示の主体”を明確にせよと命じている
2023年の景表法改正によって、広告であるにもかかわらず「広告主が誰であるかを隠している」表示は、ステルスマーケティングとして違法とされた。具体的には、以下のようなケースがアウトとされている。
- 自社が依頼して作成・掲載させた記事なのに、「第三者が自主的に評価した記事」であるかのように見せかける。
- 「体験談」「レビュー」「評価」といった形で、実在しない利用者を登場させる。
- 企業の関与を伏せ、比較ランキング・おすすめサイトのような体裁を装う。
「けんせつくん」の事例は、まさにこれらに該当する。「紹介されました」という文言の中には、どこにも「これは広告です」との注記もなければ、「PR記事」「タイアップ」といった表示も見当たらない。つまり、一般読者に対し「これは公平な第三者の意見です」と錯覚させる構造そのものである。
実在性なき「情報サイト」たち──実はファクタリング業者の“下請け”
では、これらの紹介元とされている「ファクタリング情報センター」や「不動産テックラボ」なるサイトの実体はどうなのか?
検索すればすぐに分かるが、どれも法人名義すら明かしておらず、編集責任者や発行主体も不明。つまり、まともなニュースメディアではなく、“記事広告を請け負うメディアもどき”に過ぎない。SEO対策を駆使して検索上位に並べ、「信頼されている感」を演出する、いわば“情報工作の舞台”である。
マネットについても、正体は上場企業オリコンの系列だが、掲載は基本的にすべて“タイアップ広告”。その事実を知っている読者は極めて少ない。
これらの媒体を並べて「紹介されました!」と誇示する行為は、消費者庁のステマ判定基準に照らせば、アウトの可能性が極めて高い。紹介されたという事実そのものが虚構に近いのである。
ファクタリングの社会的信用を損なう“自爆広告”
そもそも、真に優良な金融サービスであれば、ステマまがいの手法を用いる必要などない。実力で勝負すればいい。だが、「けんせつくん」がこのような欺瞞的な演出に頼るということは、裏を返せば、サービスの本質では信用を勝ち得ない自覚があるということだ。
ファクタリング業界全体にとっても、この手のステルス広告はマイナスでしかない。悪質業者の“信用偽装”が横行すればするほど、業界全体が胡散臭く見られるのは避けられない。
消費者庁は本腰を入れて取り締まるべき
ステマ規制が施行されてから半年以上が経つが、いまだにこのような“グレーゾーンすら超えたアウト案件”が野放しなのは問題だ。行政は、明らかに悪質な第三者装い型広告に対して、積極的に警告・是正指導・処分を行うべきである。
また、ファクタリングのような金融に類するサービスについては、消費者に誤認を与える表現がどれほど深刻な被害を生むかを認識する必要がある。誤った相手を信用し、高額な手数料や不利な契約を結ばされる建設事業者は少なくない。これは単なるマーケティング手法の問題ではなく、「情報弱者を食い物にする構図」に他ならない。
終わりに──ステマではなく、誠実な言葉で勝負せよ
「けんせつくん」のLPに見られるような“広告を広告と名乗らない広告”は、今この瞬間にも建設現場の中小零細業者たちをミスリードし、誤った選択へと導いている。こうした商法を平然と展開する企業に「中小企業の味方」を名乗る資格はない。
ファクタリングという仕組み自体を否定するつもりはない。だが、それを扱う企業が「信用を偽装する」ことでしか存在感を示せないのであれば、その時点で淘汰されるべきだ。
業界全体の信頼を損なう、ステルスマーケティングの毒。その矛先が、今まさに「けんせつくん」のようなLPに突き刺さっている。

