法律事務所のウェブサイトに並ぶ解説記事。ぱっと見はきちんと書かれているように見えるのですが、読んでみると「どこか他人事」「結局、自分にはどう役立つのか分からない」──そんな印象を受けたことはないでしょうか。今回取り上げる記事もその典型です。
本文は法律の条文や判例を丁寧に紹介し、淡々とした調子で進みます。しかし、その真面目さこそが最大の弱点です。情報の正確さだけを追い、読者が「今まさに困っている状況」に寄り添う視点が欠けている。これでは法律辞典の要約にすぎず、わざわざ弁護士が執筆する意味は薄いのです。
問題点1:読者の立場を想定していない
記事を読む人の多くは、法律の専門家ではありません。法律用語の意味や、裁判例の細かい解釈などに強い関心を持っているわけでもない。切実な不安や疑問に直面し、「どうしたらいいのか」を知りたくて検索しているのです。
ところが記事の内容は「〇〇という規定があります」「裁判例では△△とされています」といった他人事の羅列。まるで授業の板書を読まされているかのようです。読者は“自分ごと”に引き寄せられないまま、スクロールを止めて離脱してしまいます。
問題点2:具体的行動に落ちていない
「相続放棄には3か月の熟慮期間がある」と説明されても、一般の人にとっては抽象的すぎます。「では、私は今日から何をすればいいのか?」という問いに答えていないのです。
例えば「戸籍謄本を取り寄せる」「家庭裁判所にこの書類を提出する」といったステップを明示すれば、読者は一歩踏み出せます。情報を並べただけの記事は、法律知識を披露したいだけで、読者にとって実用性がないのです。
問題点3:安心感よりも距離感を生む語り口
記事全体のトーンは「事務的」「冷静」で統一されています。一見すると落ち着いて信頼できそうですが、裏を返せば「血の通わない説明」です。
困って検索している人は、知識よりもまず安心感を求めています。読み手の心に寄り添う言葉がないまま法律論だけが続けば、「結局相談しても冷たく対応されるのでは」と不安を増幅させてしまうでしょう。
ではどうすればよかったのか?改善の3提案
- 冒頭に“あなた”を置く
「いま突然、相続放棄が必要かもしれない状況に直面している方へ」と始めれば、読者は自分のことだと感じます。 - すぐに取れる行動を示す
「まず役所で戸籍を確認」「この書類を家庭裁判所に提出」と3ステップを明示する。専門用語は脚注や補足で説明すれば十分です。 - 人間味のある一文を加える
「悩む時間も大切ですが、期限は待ってくれません。迷ったら早めに専門家に相談してください」と添えるだけで、安心感はまるで違います。
締め:読者のために書かれた記事か?
弁護士が書く解説記事は、本来「法律を噛み砕き、生活者の言葉で伝える」ためのものです。ところが現状の多くは、条文と判例を要約するだけの“他人事の説明”。これでは事務所のブランディングにもつながりません。
読者が求めるのは「専門用語の羅列」ではなく「今日から自分がどう動けばいいか」。そこに寄り添えない記事は、検索順位で一時的に上がっても、読者の心には残らないのです。

