“即日”“審査なし”の甘い言葉にご用心――ファクタリング利用前に確認すべきこと

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

資金繰りが苦しいとき、「最短即日」「審査不要」といった文言に心が動かされる事業者は少なくありません。だが、これらをうたう一部の売掛債権を買い取るサービス(以下、便宜上「一部ファクタリング業者」)は、契約の中身や手数料体系によっては利用者にとって大きな負担になることがあります。本稿は、実名や特定サービスを挙げず、利用者保護の観点から注意点と実務的対応をまとめたものです。


1)まず押さえるべきこと--「形式」と「実態」は違う

ファクタリングは本来、企業間の売掛債権を現金化して資金を回す仕組みとして有効です。しかし「債権の買取」という形式をとるため、いわゆる貸金業の規制の対象にならない場合があります。形式上“譲渡”であっても、手数料や返還義務、遅延時の取り扱いを見ると「実質的に高率の金銭負担」を伴うケースがある点は忘れてはいけません。

重要なのは契約書の「中身」です。見た目のキャッチコピーや広告表現に惑わされず、契約条項が事業者にとって不利な内容になっていないかを確認することが第一です。


2)典型的なリスク表現(広告・説明で見られる要注意ワード)

以下のような文言が並ぶ広告やランディングページを見かけたら、慎重に検討してください。

  • 「審査なし」「即日入金」
  • 「どんな状態でも対応可能」「赤字でも可」
  • 「手数料は業界最安」や「○%〜」としか書かれていない表現

これらは一見魅力的ですが、実際の契約で手数料計算の方法、遅延損害、返還義務、解約条件などが複雑に設定されている可能性があります。見積りや説明だけで判断せず、必ず書面で詳細を求めてください。


3)契約書で必ずチェックすべきポイント(実務チェックリスト)

  1. 手数料の明確な算出方法
    → 「手数料○%」だけでなく、期間換算(例:月率→年率)で試算してみる。短期で高率になる場合は実質高利となる。
  2. 返還義務の有無とその条件
    → 売掛先の入金がなかった場合に「買い戻し(返還)」が発生するか。返還がある場合はその算定方法を確認。
  3. 遅延やキャンセル時のペナルティ
    → 遅延損害金や違約金の規定を確認。高額なペナルティが設定されていないか。
  4. 売掛先への通知の有無(2社間か3社間か)
    → 通知なし(2社間)の場合、取引先に知られず資金化できる反面、トラブル化しやすい。
  5. 会社情報と運営実態の透明性
    → 事業者の所在地、代表者、資本金、過去の実績などが明示されているか。説明が曖昧な場合は注意。
  6. 契約解除条件
    → 途中解約や条件変更時の取り扱いを確認。解除時の負担が大きくないか。

4)契約前にやるべき実務(証拠と相談)

  • 広告・見積り・説明のスクリーンショットを保存する(後に説明と違う場合の証拠になる)。
  • 見積りは書面で取得し、口頭だけの説明で安易に進めない。
  • 契約書は専門家に確認(弁護士・司法書士)。重要条項の解釈や、実質的に貸付に当たらないかの判断は専門家に依頼するのが安全。
  • 支払実績・振込明細を必ず保管。交渉や法的手続きで必要になる。

早期に専門家へ相談することで、後の被害回復や交渉の選択肢が広がります。


5)トラブル化した場合の対処(初動が重要)

  • 過払いや不当な返還請求が疑われる場合は、弁護士に現状を提示して法的に争えるポイントがないか相談する。
  • 強圧的な取り立てや脅迫があれば、警察への相談も選択肢に入る(恐喝や脅迫は刑事事件になり得る)。
  • 消費生活センターや所管行政への相談・通報も忘れずに。被害の集積が行政の調査を促すことがある。

被害と感じたら放置せず、記録を整えて迅速に行動することが被害回復の鍵です。


6)制度面の課題と提言(読者への提案)

現行の法制度では「形式」と「実態」の線引きにより、利用者保護が十分に機能していない点が指摘されています。事業者と行政双方に対して、以下のような改善が求められると考えます。

  • 実態に基づく判断基準の導入(契約の名目ではなく実質を評価)
  • ファクタリング事業に対する登録制・開示義務の導入(手数料体系や取立てルールの公開)
  • 手数料計算の透明化義務・上限規定の検討
  • 違法または過度な取立てに対する迅速な行政対応の整備

これらは立法・行政の課題ですが、被害を出さないためには早急な対応が望まれます。


7)最後に――冷静な判断が事業を守る

資金繰りに追われる場面では、短期的な「早さ」に飛びつきたくなるのは当然です。しかし、数値的な負担や契約条項の重さを見落とすと、取り返しのつかない結果を招くことがあります。ひとまず立ち止まり、契約書を読み、専門家の意見を求める――その冷静さが、あなたの事業を守ります。