行政の沈黙が生む闇――2社間ファクタリングの制度的放置
いま、中小企業の資金繰り現場で静かに広がる「2社間ファクタリング」。
本来は売掛金を譲渡して即座に資金化する仕組みだが、現実は“貸金業の衣を脱いだ高利金融”である。形式上は融資ではないため、貸金業法も利息制限法も及ばない。監督官庁の目は届かず、法の隙間で「合法ヤミ金」が堂々と営業を続けている。
問題は、こうした業態が「制度的放置」によって半ば公認されていることだ。
金融庁は「貸金行為ではないため所管外」、消費者庁は「事業者間取引のため特商法の対象外」として関与を避け、中小企業庁も「相談には応じるが監督権限はない」と距離を置く。結果として、誰も監督せず、誰も責任を取らない“無主地帯”が生まれている。
こうした空白を最も巧妙に利用しているのが、業者自身とその広告ネットワークである。
「即日入金」「審査なし」「赤字でもOK」――検索エンジンに並ぶ派手な文句の裏側には、アフィリエイト報酬で結ばれた広告構造がある。中立を装った比較サイトや「おすすめランキング」は、実際には業者と提携した誘導装置に過ぎない。そこに表示される“口コミ”や“安心の実績”は、SEOによって緻密に設計された擬似信頼の演出だ。
借入を避けたい中小事業者ほど、この構造の罠にはまりやすい。
銀行融資が受けられず、資金繰りに追われる中で、「ファクタリングなら借金ではない」と勧められる。だが実際には、手数料が30〜40%に達する例も珍しくなく、資金調達ではなく債権の切り売りに近い。加えて、契約内容には「売掛先への通知禁止」「譲渡証明書の事前署名」など、法的に極めて不透明な条項が並ぶ。まさに監督不能ビジネスという名がふさわしい。
この構造的問題は、単なる一業種の逸脱にとどまらない。
検索と広告が「情報の正しさ」を支配する現代において、行政の沈黙は実質的に脱法行為の容認へとつながる。監督官庁の“管轄外”という論理は、法の趣旨を骨抜きにし、情報空間における倫理をも崩壊させている。結果、最も弱い立場にある零細事業者が、制度の谷間で静かに搾取されているのだ。
いま必要なのは、監督官庁の再定義である。
2社間ファクタリングは、形式こそ債権譲渡だが、実態は明らかに金融取引である。
ならば、金融庁が中心となり、登録制・手数料上限・実質年率換算の開示義務を法制化すべきだ。加えて、広告面では消費者庁と総務省が連携し、「金融関連アフィリエイト」への透明性義務とステルスマーケティング禁止を徹底することが不可欠だ。
監督不能のまま放置すれば、業者は次々に新しい名称をつけ、規制の網をすり抜けていく。
“資金調達サポート”“売掛保証”“キャッシュフロー改善支援”――呼び名を変えても本質は同じだ。
法の曖昧さが続く限り、闇は制度の内側に居座り続ける。
かつて貸金業界に対して社会が果たした規制と浄化の努力を、今一度、情報と金融の交差点で再現すべき時だ。
行政が“沈黙”を続ける限り、その沈黙こそが、闇を合法にしてしまう。

