「スマホひとつで始まった地獄」
私は福岡で在宅のデザイナーをしています。もともと会社勤めでしたが、コロナ禍で独立してフリーランスになりました。
仕事は順調で、複数の企業から継続案件もいただけるようになり、少しずつ自信がついてきた頃でした。
ただ、支払いサイトが長い。月末締めの60日後払いなんて当たり前で、生活費や外注費を立て替えるたびに、手元資金が減っていくのが悩みでした。
ある日、Instagramの広告で「スマホだけで即日資金化」という文字が目に入りました。
明るいデザインで、利用者の笑顔の写真と「上場企業が運営」「最短30分入金」などの文言。
口コミもたくさんあり、半信半疑ながらも「一度だけなら」と思って申し込みました。
申し込みは本当にスマホで完結。免許証の写真、請求書のPDF、そして取引先の担当者とのメール履歴をアップロード。
チャットでの対応も丁寧で、「審査完了しました、入金は本日中です」とメッセージが届き、正直ほっとしました。
入金額は40万円。請求書の額はおよそ60万円でした。
つまり手数料は20万円。30%以上です。
高いとは思いましたが、「カードローンより早いし、信用情報にも載らない」と説明され、納得してしまいました。
ただ、後から冷静に考えると、1〜2ヶ月で30%というのは、年利換算すると完全にヤミ金レベル。
当時はそんなこと考える余裕もありませんでした。
その後、同じような案件が続き、また資金が足りなくなりました。
一度使った業者から「ご利用ありがとうございました。優良ユーザーとして特別審査枠をご用意しました」とLINEが届き、
また申し込んでしまったんです。
2回目、3回目と重ねるうちに、毎月の入金がほとんどファクタリングの返済に消えていきました。
請求書を売っても手元に残るのは半分。
生活費は削り、外注費は後回しにして、仕事の質も落ちていく。
それでも「次の入金があれば何とかなる」と思っていました。
さらに驚いたのは、ある日突然、勤務先(以前所属していた会社)に電話がかかってきたことです。
「岩田さんの取引に関して確認したいことがある」と。
私はもうその会社を辞めていたのに、どこでその情報を知ったのか分かりません。
どうやら、申し込み時に提出した資料の中に、古い名刺データや連絡先が残っていたようで、そこからたどられたようでした。
まさか、あんなに簡単にアップロードした書類が、こんな形で使われるとは思っていませんでした。
精神的に追い詰められたのは、そこからです。
請求書を売らなければ生活が成り立たないのに、売るたびに返済が重くなる。
メールボックスには毎日のように「次回のご利用いかがですか?」という自動送信が届き、
まるで逃げられないような気持ちになっていきました。
最終的に、弁護士に相談して分かったのは、私が使っていたその業者が「紹介アフィリエイト」で集客していたということでした。
広告を出していたSNSアカウントも、本体とは別会社。
つまり、私は“どこの誰に”契約していたのかすら正確に分かっていなかったのです。
あのとき、「スマホひとつで即日」と書かれた広告の裏側には、
個人情報の収集と、高金利まがいのビジネスが渦巻いていました。
もう二度と、あんな簡単な言葉を信じたりはしません。
スマホで完結したのは手続きだけで、後に続いたのは地獄のような資金繰りと不安だけでした。

