【寄稿】“AI審査の光と影” 第2回

ファクタリングの違法性と契約について
A Japanese chef struggling with tax returns

― スコア社会の「不可視の格差」はこうして作られる ―

AI 与信は“公平”という言葉をまとって登場した。
だが現場で起きているのは、むしろ 不公平が精密化されていくプロセス である。

前回は「見えないAIの判断基準」をテーマにした。
今回の第2回では、もっと深い問題、
つまり “スコア社会が生む新たな格差” に踏み込む。


■ 格差は「資金」ではなく「情報」から生まれる

AI 審査のポイントは、もはや
「資金があるか」「実績があるか」ではない。

実際に企業間の差が最も開くのは、
“どのデータが自社のスコアに影響しているのか”を理解できているかどうか
ただそれだけだ。

例えば——

  • 仕入れサイトをたった5日延長しただけでスコアが落ちる
  • 売上が横ばいなのに“在庫回転日数の悪化”でAIはリスクと判断する
  • 従業員の退職率が「経営体制の不安」として点数に響く
  • SNSの風評が“マーケティング弱さの兆候”として反映される

これらのロジックを“知っている側”と“知らない側”では、
経営判断が180度変わってしまう。

つまり、

■ 中小企業の格差は「AIへの理解力」の差から生まれる

そして一度開いた差は、ほとんど巻き返せない。


■ スコアは“努力”より“構造”を見ている

AI 与信は、経営者の努力より、
事業の構造そのもの を重視する。

  • 取引先が偏っている
  • 売上が季節変動型
  • 代表者の年齢が高い
  • 新規事業の比率が急増

これらは、
努力では改善しづらい項目にもかかわらず、
スコア評価では容赦なくマイナスに働く。

■ 努力が点数にならず

■ 変えにくい構造だけが減点される

これが、現場を最も苦しめている。

いわば“構造差別”のような状態が、
AI 審査の下で静かに進行しているのだ。


■ 「不安定業種」は理由なく下駄を履かされる

AI 審査が最も冷酷になるのは、
業種別の“過去の失敗率”をそのまま反映する点である。

例:

  • 飲食 →「突然の売上減」リスク
  • 建設業 →「入金遅延」リスク
  • 小売 →「在庫過多」リスク
  • 個人事業 →「依存度」リスク

それぞれの業種は、構造的にスコアが下がりやすい。

つまりこれは、
AI が業種別に“未来の破綻可能性”を自動推計している構図 だ。

経営者の熱意も創意工夫も、
業界平均という巨大なデータの前では小さなノイズに過ぎない。


■ スコア至上主義は「挑戦そのもの」を奪う

最も深刻な問題はここだ。

スコアが悪化するから、新しい挑戦ができない。
これがすでに現実になっている。

  • 新規投資 →「リスク拡大」で減点
  • 売上が伸びるまでの赤字期間 → 減点
  • 新しい市場の開拓 → 一時的に不安定 → 減点

つまり、

■ “攻める経営”がスコア社会によって封じ込められている

こんな社会に未来があるはずがない。

本来、企業の成長は不安定さを含んでいる。
挑戦して、改善して、拡大していく。
そこにスコアはついてこない。

むしろ、挑戦するほど“危険”と判断されてしまう。


■ それでも戦うなら――「スコア戦略」が必要だ

スコア社会はもう避けられない。
ならば、正面から受け止めた上で 逆手に取ればいい

具体的にはこの3点。

① スコアを“読む”のではなく“設計する”

AI の評価方法を理解した上で、
スコアを上げる行動を戦略的に配置する。

  • 売上の安定化
  • 仕入れ・在庫の平準化
  • 小口の短期借入を避ける
  • バラけた取引先の比率を整える

これらは「スコアのための経営」だが、もう必要不可欠だ。

② 数字だけでなく“ナラティブ”も準備する

AIが苦手なのは「人間の物語」だ。
金融機関との対面を残す限り、
・改善の理由
・事業の方向性
・組織の強み
これらを“説明できる準備”が決定的に重要になる。

③ スコアから自由な資金調達のルートを増やす

  • 地銀
  • 信金
  • 公庫
  • パートナー資金
  • 売掛保証
    “まだAIが統治していない領域”を複線化すること。
    これが唯一の防衛策である。

■ 結論:格差を無くすのではない。格差を“読める側”に回ること

AI 審査の格差は、止められない。
でも、乗り越えることはできる。

必要なのは、
「スコアに支配される側」から「スコアを設計する側」へ と立場を変えること。