建設業界の常識として、元請からの支払サイトは30日〜60日が標準である。
下請け・個人事業主にとって、資金繰りは常に火種を抱えている状態だ。
この“現金が手元にない時間”こそ、合法ヤミ金が狙う最も効率の良いターゲットである。
今回取材したのは、東京都内で小規模リフォーム会社を経営する 佐藤直樹氏(仮名・52歳)。
■1|支払サイト60日の現実
佐藤氏の会社は、主にリフォーム工事を下請けとして請け負う。
元請から請求書を提出してから、支払日まで平均60日。
- 材料費・人件費は先払い
- 元請への工事報告や請求書処理も時間がかかる
- 現場の急な追加工事に対応する資金も必要
このため、「明日の支払い分の現金が足りない」という状況が常に発生する。
これが、合法ヤミ金にとっては格好の餌場となる。
■2|最初の接触は「資金調達の相談」という名目
佐藤氏がある日、取引先の紹介で出会ったのが、
「建設業専門ファクタリング」と名乗る業者だった。
営業トークはこうだった。
- 「請求書を買い取ります、最短当日振込」
- 「審査は売掛先基準なのであなたの信用情報は関係なし」
- 「支払サイトのストレスを今すぐ解消できます」
表面上は便利なサービスに見える。
しかし、これが危険金融の典型的入口である。
■3|手数料の罠 ― 表示は“買取率”、実質年率300%超
契約書上の文言は巧妙だ。
- 「買取率20〜35%」
- 「売掛先が支払遅延した場合の追加費用有り」
- 「契約期間終了後も、未精算分が自動更新」
佐藤氏が必要としていた100万円が、手元に入ったのはわずか65万円。
1か月後に請求された返済額は100万円。
**実質年利換算で300%を超える“合法ヤミ金”**に変貌する。
■4|返済遅延時の心理的圧力
1回目の返済が滞ると、業者は即座に行動を開始。
- 「支払わないと元請に連絡します」と暗に脅す
- 電話は毎朝、毎晩
- 請求書の控えや社名を公開するかのような態度で圧力をかける
建設業界は、元請との関係が非常に重要。
「信用を失うと仕事を失う」という恐怖を利用されるわけだ。
■5|建設業界が“合法ヤミ金”に弱い理由
① 支払サイトが長く、現金不足が日常
元請からの支払が2か月後。
急な仕入れや給与で現金ショートが頻発する。
② 下請け構造で情報共有が少ない
同業者からの相談や情報が少なく、業界特有の弱点が孤立している。
③ 法の抜け穴が多い
“売掛金買取”として形を整えれば、金融法規制の網をすり抜けられる。
④ 信用が命の世界
「元請からの信頼」を守ろうとする心理を狙われ、逃げ道を封じられる。
■6|防衛策 ― 建設業者が取るべき手段
- 信用保証協会や自治体の制度融資を先に検討する
短期的にはコストがかかっても、法規制外の業者より安全。 - 取引先と支払条件を明確化する
支払遅延時のペナルティや資金ショート時の協議ルールを契約書で明確化。 - 同業者ネットワークで情報共有
“合法ヤミ金の勧誘文句”や被害事例を共有して警戒感を高める。 - 現金フローの可視化と余剰資金の積み立て
支払サイト60日でも、手元資金を1か月分確保できれば、餌場から逃れられる。
■7|結論
建設業界の下請け・個人事業主は、
資金繰りの不安と信用リスクという二重の弱点を抱えている。
合法ヤミ金は、これらの弱みを巧妙に利用して利益を吸い上げる。
「売掛金があるから大丈夫」と思っても、手数料・違約金・心理的圧力で、あっという間に経営を圧迫される。
佐藤氏は最終的に、専門家に相談し、契約を整理することで被害を抑えた。
しかし、同じような被害は全国の建設業者に潜在的に存在している。
合法ヤミ金は「規制の網をくぐる危険金融」であることを、業界全体で共有するしかない。

